第14回岡山県病児保育協議会拡大研修会報告

令和元年6月23日に「第14回岡山県病児保育協議会拡大研修会」を開催しましたので、報告させていただきます。

要綱

日時

令和元年6月23日(日)

場所

岡山県医師会館(新館 三木記念ホール)

主催

岡山県病児保育協議会

講演内容

特別講演:保育分野の現状と取り組みについて~病児保育を中心に~

講師:時末 大揮 様(厚生労働省 子ども家庭局保育課 課長補佐)

  特別講演では、少子化・出生率についての背景、保育を取り巻く動向や保育に関する現状と取組についてご講演頂きました。少子化等の背景には、未婚率の上昇や晩婚化の継続を挙げられていました。都道府県の資料より、1組の夫婦からの出生児数が2人に達しておらず、その理由の一つに子どもが病気になった際に仕事を休まざるを得ない背景があるという事をお話頂きました。また、子ども・子育て支援に必要な財源の確保により、事業の法定化や対象児童・職員配置の改善や幼児教育・保育の無償化の取組が進められているとの事です。待機児童についてもお話頂き、岡山県は全国の中で最も問題とされており、特に1歳・2歳児が多く解消されていないそうです。更に、保育人材の確保に向けた取組として、新規資格取得支援・就業継続支援・離職者の再就職支援等、様々な支援が実施されている事を知りました。病児保育事業は、病児・病後児対応型、体調不良児対応型、非施設型(訪問型)、送迎対応型の4つに分類され、それぞれのニーズに合わせて利用でき、保護者も安心して働く事ができます。今回お話頂いた国での取組により、病児保育が今後より多くの方に周知されると良いと思いました。


基調講演:岡山県における病児保育の源流と制度化拡大に向けての取り組み

講師:青木 佳之 先生(医療法人 青木内科小児科医院 山陽ちびっこ療育園管理者 岡山県病児保育協議会 会長)

 基調講演では、現在の働く女性の悩みとして、子どもが病気の時に仕事を休めない、代わりに子どもをみる人がいない等が挙げられている為、医療機関・保育機関・職場が連携する事で家庭を支援する重要性や病児保育の必要性についてご講演頂きました。今後、市町村広域利用の制度を県内のみならず、隣接県の方でも利用できる様、県域を拡大する事や保護者の自己負担軽減の為、企業参加による地域貢献・子育て支援が必要な事、全国的な病児保育施設の不足の解消等、多くの課題がある事も教えて頂きました。これらの課題が解消されると子育てと仕事の両立が可能となり、女性の社会進出と社会地位が向上するとの事です。また、超高齢社会の中で、少子化対策としての病児保育が有効で効率的な事業である事も知り、とても勉強になりました。また利用者より病児保育の良い点として、子どもの急な体調不良でも病児保育のおかげで安心して仕事に行けたことや、日中の様子や病状等の記録を細かく書いてくれるので安心できる等の声がありました。更に、課題点は、保育所利用料に加えて病児保育の利用料が必要となるので利用料の減額、続けて利用する場合は割引制度があれば利用しやすい等の声がありました。この様な声を参考に病児保育がより良い事業へ変わる様、活かせたら良いと思いました。

教育講演Ⅰ:発達障害をもつ子どもの支援ー多様性の尊重と共生社会を目指してー

講師:中島 洋子 先生(児童精神科医師 まな星クリニック 院長)

 教育講演Ⅰでは、発達障害についてご講演頂きました。発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)等、様々な種類があり、よく併存して出現するそうです。その中でも、ASD特性への支援が不十分だと自閉症が強まる事や、自己否定的言動等、二次障害に発展する事もあるそうで、コミュニケーションスキルを伸ばす事や、不適切な行動への対応等の心理教育的アプローチで支援をする事がとても大切だと教えて頂きました。更に、ADHDへの治療的アプローチとしては、環境調節や、行動療法等の社会心理的アプローチや薬物療法がある事を学びました。またその子どもだけではなく、親への心理的問題への支援も重要だと教えて頂きました。発達障害があるからと否定的に捉えるのではなく、ASD特性の一人で興味のある事に取り組むのが好き、繰り返し反復し工夫する事が好き等や、ADHDの好奇心が旺盛、フットワークが軽い等、強みに変える考え方をする事で、その子らしさが尊重されると知る事ができ、とても勉強になる講演でした。

教育講演Ⅱ:食物アレルギーの基礎知識と日常管理、予防・治療のトピックスもまじえて

講師:福岡 圭介 先生(小児科医師 福岡小児科アレルギー科 院長)

 教育講演Ⅱでは、食物アレルギーについてご講演頂きました。食物アレルギーには、即時型と遅発型の2種類があり、即時型は原因食物を食べて数分~2時間以内に症状が発現し、症状の出現が早いほど進行が速く、重篤な症状につながる事が多いそうです。遅発型は原因食物を食べて1~2日後から症状が発現し、4~5日間毎日続けて食べることで出てくることもあり、主な症状はアトピー性皮膚炎だそうです。中にはアナフィラキシーショックを起こす事があり、エピペンの使用を迷った場合は必ず使用するべきだと教えて頂きました。また、ピーナッツ油入りベビーオイルや小麦粉配合洗顔石鹸等、皮膚から食物抗原が取り込まれ食物アレルギーの原因になる事もあると知り、十分に注意しなければならないと思いました。更に、長期にわたる食物除去をするのではなく、食物経口負荷試験を実施し、少しずつ食べられるようになる事でその子どもや保護者の心理的負担が軽減される事がわかりました。

研修会を終えて

 今回の研修会を通して、様々な分野の講演を聴講する事ができました。現在の国や県の課題が少しずつ改善され、病児保育の利用が身近な物になれば良いと思いました。また、発達障害児への具体的な支援や特性を強みに変える考え方を学ぶ事ができました。更に、食物アレルギーがある子どもに対して食物除去を行うのではなく、食物経口負荷試験を行う事で、少しずつ食べられるようになるとわかり、とても勉強になりました。今回の講演を元に今後の保育の中で活かし、病児保育士としての専門知識を深めていきたいと思います。

 最後になりましたが、研修会開催にあたりご協力して頂きました皆様に深くお礼申し上げます。

山陽ちびっこ療育園 保育士 根岸

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