第20回 岡山県病児保育協議会研修会報告

令和6年2月18日(日)に「第20回 岡山県病児保育協議会研修会」を開催しましたので、報告させていただきます。

要綱

日時

令和6年2月18日(日)

場所

きらめきプラザ(岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館)会議室706

主催

岡山県病児保育協議会

講演内容

特別講演:保育行政の現状と動向について~病児保育を中心に~

講師:松村 美佳 先生(こども家庭庁成育局保育政策課 保育医療対策係 係長)

特別講演では保育をめぐる近年の動向を基に、こども家庭庁が行っている取り組みや病児保育事業の制度や課題についてお話いただきました。
こども家庭庁は、子どもの視点に立って意見を聴き、子どもにとって一番の利益を考え子どもと家庭の福祉の増進や保健の向上を支援し、子どもの権利利益を守るために令和5年4月1日に設立されました。子育てや少子化、待機児童、子どもの貧困、児童虐待等の子どもを取り巻く社会問題に取り組まれています。当面の主な課題として子どもに関する制度の改正や子どもの自殺対策の強化・安全対策の推進、子どもの貧困対策・児童虐待防止対策等を挙げられています。それを進めるうえで、大人だけではなく子どもの意見を聴き政策へ反映させることを大切にして子どもと子育てにやさしい社会づくりを目指されており、こども家庭庁の役割に期待されます。
近年、保育の現場にて新しいシステムの導入が推進されています。そのひとつにパソコンやタブレット等を活用して登園管理や子どもの見守り等の安全対策を行う等様々な機能を備えたICTシステムがあります。ICTシステムを利用することでの利点として、①子どもに関わる大切な緊急連絡をはじめ、登降園管理や保育に関する計画・記録等の情報を早く確実に共有することができる。②保護者との連携では写真等を用いて子どもの学びや育ちの姿を共有し、保育の理解を基盤とした信頼関係の構築に繋がる。③安全対策で園児の位置情報を把握し園や保育士から離れた際に通知することで子どもの見守りを強化する。④業務を電子化することで、職員の業務が効率化され子どもと向き合う時間を多くもつことが可能となる等が挙げられていました。
病児保育事業については、感染症の流行や病気の回復による突然のキャンセル等により利用児童数の変動が大きく、安定した事業運営ができにくいということが課題となっており、改善するために補助金の単価の改正が行われ安定的な運営が図れるような施策も策定されています。また、保育士の配置基準についても見直しが行われ、現在は一般の保育園と保育士の配置基準が同じですが、病児保育では感染症ごとに部屋を分けた保育や体調不良児の保育を行うため、一般の保育園よりも多く保育士を配置することが必要ではないかという意見が挙がり、そうできるように案を出して取り組まれるとのことです。また、そのうえで医療的ケア児の病児保育受け入れについても議論中であり、感染対策等の課題を解決し支援を進めていきたいとも言われていました。保育の質を高めるために医療的ケアと人員配置、病児保育の経営の基礎を固めていきたいとのことです。

シンポジウム:こども家庭庁に期待する病児保育の現状と課題からの提案

シンポジスト
・藤井 智香子 先生(岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 講師)
・松尾 直光 先生(河原内科松尾小児科クリニック こどもデイケアルーム“さくら”院長)
・青山 興司 先生(青山こどもクリニック 院長)
・薄 敬子 先生(青木内科小児科医院 山陽ちびっこ療育園 保育士)

シンポジウムでは「こども家庭庁に期待する病児保育の現状と課題からの提案」と題しまして、藤井先生より岡山県病児保育協議会で令和5年11月に実施した「病児保育の現状と課題」のアンケート調査の結果について、松尾先生より岡山県北部の地域の特徴、青山先生より岡山市の地域の特徴を交えた病児保育の現状と課題について、薄先生より利用者視点からの病児保育に対する思いや課題についてお話がありました。
現代社会では、共働き世帯や仕事を継続したいと思う保護者が多い傾向にあります。仕事と子育てを両立させる中で、子どもが病気になった際すぐに仕事を休むことが難しいことや周りに看てもらうことが難しい等の状況がありそれに対応するために病児保育の必要性が高まってきていると言われています。
しかし病児保育の施設数や設置場所については偏りがあり、感染症の流行期は定員が上限に達して利用ができないことや施設が近隣にないエリアは遠い所まで行かなければならないという課題があり、施設数の増加やエリアごとの設置を求める意見がありました。施設側としても利用率が高ければ経営が安定しやすいものの、当日キャンセル等で利用の予測を立てることが難しく、定員を増やせないような状況があります。病児保育の経営については行政からも支援があるため、行政と連携してどのような支援があるのかを知り、必要な支援が施設へ届くことが求められると思います。利用料金については、利用者の立場では通常の保育料に加えて病児保育料を支払うことや数日利用になると利用料金が高額になるということがあります。これらを解決させるために企業からの一部をサポートする制度等社会全体で働く親への支援が広がってほしいという意見が挙がりました。行政や施設・企業等様々な分野から利用者が利用しやすい環境を整えていくことが課題であると感じました。

研修会を終えて

今回の研修会では行政、利用者、病児保育施設の3つの立場で、それぞれが取り組んでいることや求めていることを聞くことができるよい機会となりました。病児保育施設として、行政の取り組みや出している制度を知りそれを施設の抱える問題と照らし合わせることで、よりよい運営を考えていきたいと思います。
研修会の中でも「育休復帰時、子どもは乳児であり感染症にかかりやすい時期であるため病児保育は心の支えとなる」という声もあり、病児保育が必要とされているということを実感しました。 行政と連携して、人員や経営が安定した運営の下、細やかなケアを行い利用児や保護者が安心して利用することができる病児保育施設を作っていきたいと思います。
最後になりましたが、研修会開催にあたりご協力いただきました皆様に深くお礼申し上げます。

山陽ちびっこ療育園 保育士 坂野

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